「詩を書く」指導方法②

「詩を書く」

「詩を書く」指導方法②

「添削指導」

この記事では、実際に書いてきた詩に対する添削指導についてまとめてみる。一度で上手い詩を作れる生徒はいない。それでも前の記事の方法で書かせると、伝えたい気持ちは明白にわかるし、どこに重点を置きたいのかもわかってくる。そこで後は一緒に考えながら手直しをする。あくまで生徒主体の作品であるようにするために、「この表現もいいけど、こういうのはどう?」、「ここがわかりにくいけど、どうすればいい?」などの言葉で指導していく。もちろん、感情的に「絶対にこっちの方がいい!」と言ってしまう場合もあるが…。けれども、いくら生徒の主体を大事にするといっても、ある程度の完成度の詩を作ってこその達成感である。教師が何も手直ししないのはだめだ。いろいろなヒントや選択肢をあげて、最終的に生徒が納得する作品にしあげるのを目標にしている。

まず大事なのは言葉選びだ。言葉はそれぞれイメージを持っている。私たちが聞いたときに、「明るい言葉」もあれば「暗い言葉」もある。「明るい言葉」だけを集めて作った詩は、「楽しい」と直接書かなくても、「楽しい雰囲気」がするし、「暗い言葉」だけを集めれば「悲しい雰囲気」の作品になる。

 例えば『入学式』という題で詩を書いた場合、

「朝・白いカーテン・新しい靴」

などを使えば、なにか新しい希望を感じる作品になる。逆に

「重い鞄、ぶかぶかの制服、長い廊下」

などを使えば、緊張や心細い感じの詩ができる。これはより短い文の中で感情を表現する俳句でも使われている。(俳句についてはまた別で書きます。)

 特に強調しなくても、前の記事での方法を使えば、生徒たちが勝手に選んでくれることが多いのだが、添削やアドバイスをするときには、生徒が書きたい感情を意識して指導するとわかりやすい。(そのためにも、本文には書かずとも、書きたい『感情』は最初に書かせて教師が把握すべき。)

また、最初の出だしがわからない、という生徒のためには「音」で始めるように指導している。笛の「ピ――ッ」という音や、「シャー―ン!」というシンバルの音、歌声なら歌詞を書いても良いし、「♪」で初めてもよい。

多分、何で初めても良いのだが…。あえて、理屈をこねるなら…。音がなって耳に入ると、人は興味を持ってそちらを向く。視覚だと自分がそちらを向いて目で見ないと入って来ない。「音」がなれば聞き手の意志がなくても、一度はこちらに注意を促すことができる。また、目はつぶることができるが、耳は常に空きっぱなしで、音を意識せずとも集めている。つまり、「聴覚」は五感のなかでも特に広範囲で、敏感な器官なのではないだろうか。だから「音」から初めることで、より読者に、作品への興味をもたせることができるのだ、と考えている。

他にも指導で気をつけているのは、生徒たちが「どの時間を描きたいのか」を明白にすることだ。詩は「瞬間」を描くことができるし、時間の流れをそのまま追うこともできる。また、一つの連を回想に使ってもおもしろい。生徒たちにありがちなのは、時間を追って順に書くことだ。ある生徒は試合が始まる前の緊張から、前半戦、休憩、後半戦、ロスタイム…と、長々書く生徒もいる。これもまた詩が「日記」になってしまう要因だ。私はできる限り書きたい感情は絞るように指導する。試合前の緊張なら緊張を、勝った時の喜びならその喜びを、という風に、どちらかというと「瞬間」の感情を重視する書き方だ。これは生徒たちが試合、舞台の本番などといった、特に緊張感を伴う題材を選ぶことが多いからかもしれない。

詩が長くなりすぎると、どうしても緊張感は薄れてしまう。短い中で言葉を最大限に選んでテンポよくまとめたい。特に試合中のようすはスピード感がでるように指導したい。そのためにも、日記のような散文にならないためにも、「体言止め」はよく使う。例えば、

「目の前にボールが飛んできた」という動詞で終わっている文を「目の前に飛んできたボール」

と、いうだけで、それなりのスピード感がでて歯切れもよい。実際に次の行動に出るまで、例えば「蹴る」という行動にでるまで、1秒とかかっていないのだから、詩でもそれを表現できるようにしたい。

あとは普段から詩を習う時にでてくる、比喩法や擬声語、擬態語、擬人法、倒置法、対句なども取り入れる。この部分は詩を読解するときにどれだけ上手く教えているかにもよるが、感性の良い生徒は勝手に使ってくれる。それを存分に活かしてあげればいい。

ただ、あまりにも比喩にこだわりすぎて、結局なにが言いたいのかわかりにくくなる生徒もいる。(知的好奇心の強い生徒ほどなりやすいので注意!)

 完成した作品は生徒たちが全員分よむようにするのだが…

 この「他人の作品を読む」ことについては、まだ少し書きたいことがあるので、次の記事に続ける。(もう少しお付き合い下さい。)

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